Bクラス 2nd Season 2019

第6回 振替「『ノートルダムの鐘』と『レント』」(2019/12/21)

 10月に予定されていた本タイトル、台風19号の影響により中止・払戻とさせて頂いたため、2019年の締めくくりに振替講演を実施いたしました。

 

 一見するとまるで関連性のなさそうな2作品。副題として「音楽ジャンルの使い分けとはどういうことか」を設け、タンゴやチャチャチャ、ゴスペルといったジャンルを含む『レント』、そして、グレゴリオ聖歌やマーチ、ジプシー音楽、さらにはブラームスの引用といったジャンルを含む『ノートルダムの鐘』を、

 

 軸となる音楽と、その周辺に配置された多様なジャンル音楽の関係性から、音楽によって作品全体が如何に構成されているか

 

 という視点で観察しました。両作品を対照することによって初めて見えてくる、脚本メッセージに対する作曲家のアプローチ。大きな建造物としての2時間半のミュージカル。

 

 両作品の音楽をマッシュアップするゲームなどを交えつつ、普段なかなか機会がないからこそ、作品全体を「俯瞰」することの意義についてご提案しました。

 

 

 

【演奏曲】

・「世界の頂上で」『ノートルダムの鐘』(ピアノ)

・「いつか」『ノートルダムの鐘』(ドイツ語)

・"Seasons Of Love"『レント』(英語)

・「地獄の炎」『ノートルダムの鐘』(英語)

・"I'll Cover You Rep."『レント』(英語)

第5回「『キャッツ』音楽の縦糸と横糸」(2019/9/22)

「一曲独立型でストーリーがない!」とか「キリスト教の予備知識がないと理解が難しい!」とか、大ヒット作の割には色々なご意見が世界中からある、本作『キャッツ』。

 

今回は、作曲家ロイド=ウェッバー本人の自伝をベースに、

作曲家がどのような順番で曲を書き、何を考えたか

に焦点を当てて、繙きました。

 

大きな問題は2つ。

①序曲に隠された暗号とは何か。

②作品を貫く音楽の「芯」は何か。

 

暗号については特に、楽譜を使わずに高度な作曲技法をご説明するのは非常に難しく、腑に落ちなかったという方もいらしたかもしれません。今後同様のテーマに際し、台本の精査に努めます。 

音楽の芯については、講師たち自身、これまでの観劇体験の中で気づき得なかったことを改めて確認し、発信することができ、またそれについて多くの反響を頂きました。

 

改めて、作品の知名度が高ければ高いほど、その核心が盲点になりがちということを実感した回でもありました。

 

【演奏曲】

・「ガスー劇場猫」(抜粋)(英語)

・「ミストフェリーズーマジック猫」(抜粋)(英語)

・「オーヴァーチュア」(抜粋)

・「ラプソディー:風の強い夜」(英詩朗読)

・「グリザベラー娼婦猫」(英語)

・「幸福の姿」(英語)

・「メモリー」(英語)

第4回「『ウェストサイド物語』と『ロミオとジュリエット』」(2019/8/25)

同じシェイクスピアの戯曲『ロミオとジュリエット』を題材としたふたつのミュージカル、それも、英語で書かれた『ウェストサイド物語』とフランス語で書かれた『ロミオとジュリエット』。

 

共通するシーンがあるのは当然として、そこにどんな音楽の違いがあるのか。

 

◆それぞれの作曲家は何を意図してそのシーンを描いたのか◆

 

この点にフォーカスしていきました。さらに、『ウェストサイド物語』の音楽が、チャイコフスキー作曲の、オーケストラのための『ロミオとジュリエット』という曲から多大な影響を受けていること。

 

『ウェストサイド物語』にしか存在しないシーン、「サムホエア」という音楽の秘密。

 

『ウェストサイド物語』という超大作が先例としてある中で『ロミオとジュリエット』を作曲したプレスギュルヴィックが、果たしてどんな音楽的戦略をとったのか・・・?

 

 

  

【演奏曲】

・"I Feel Pretty"(『ウェストサイド物語』)(英語)

・"Un Jour"(『ロミオとジュリエット』)(フランス語)

・「トゥナイト」(『ウェストサイド物語』)抜粋(英語)

・「ひとつの手、ひとつの心」(『ウェストサイド物語』)抜粋(英語)

・「エメ」(『ロミオとジュリエット』)(フランス語)

・「サムホエア」(『ウェストサイド物語』)(英語)

第3回「『美女と野獣』にみるアラン・メンケン音楽の変遷」(2019/7/27)

    '91アニメ、'94ミュージカル、'17実写と、26年にわたり媒体の変化を続けてきたディズニーの名作『美女と野獣』。

   そのすべてで作曲を務めたアラン・メンケンが音楽の中に込めたメッセージを繙きました。
    特に、ミュージカルにおけるベルのソロ「わが家」と、ビーストの「愛せぬならば」、また実写の「時は永遠に」との関係を観察。コード進行の特徴を、楽譜を一切使わずに、数学の図形のようにして解説。鍵となったのは鏡像関係。
 
    一方で、ミュージカルと実写それぞれのビーストソロ、「愛せぬならば」と「ひそかな夢」の音楽的な比較、実は'91アニメから続いている仕掛け。これらを演奏とともにお伝えしました。
 
    アラン・メンケンという作曲家の、ストーリーに対する音楽での巧みなアプローチを、クラシック音楽の歴史や「救急車のサイレン」などの雑学も交えながら。
【演奏曲】
・「わが家」“Home”('94ミュージカル)
・「時は永遠に」“How Does A Moment Last Forever”('17実写)
・「美女と野獣」“Beauty and the Beast”('91アニメ以来すべての媒体)
・「ひそかな夢」“Evermore”('17実写)
・「愛せぬならば」“If I Can't Love Her”('94ミュージカル)
次回8/25(日)は『ウェストサイド物語』と『ロミオとジュリエット』です。

第2回「『ミス・サイゴン』などにみる西洋ミュージカルにおける『アジア』」(2019/6/29)

 第1回でも触れた『ミス・サイゴン』という作品を中心に、『王様と私』『太平洋序曲』を例に、西洋作曲家からみた東洋音楽の世界、また、〇〇国風音楽に聴こえる秘密、について、楽譜や専門用語ではなく、数多くの例をピアノや歌で演奏しながら解説しました。

 

 特に「アメリカン・ドリーム」という曲について、その歌詞・ストーリーが含む、サイゴン、フランス、バンコク、アメリカという4つの地域性について、全てが音楽で描き分けられていることをご紹介し、実際に英語で演奏しました。

 

 ミュージカルの音楽を前提に、音楽の地域性や土着性について議論する機会はなかなかないので、挑戦的ながら有意義な試みだったのではないかと思います。

 

【演奏曲】

・「今がこの時」『ミス・サイゴン』(英語)

・"A Puzzlement" 『王様と私』(英語)

・「ドラゴンの夜明け」『ミス・サイゴン』(英語)

・"Please Hello" 『太平洋序曲』(日本語)

・「アメリカン・ドリーム」『ミス・サイゴン』(英語)

 

第1回「『レ・ミゼラブル』から『ミス・サイゴン』へ」(2019/5/18)

 Bクラス新シーズンの幕開けとして、開講当時東京公演上演中の『レ・ミゼラブル』と、同じ作詞作曲家コンビ、アラン・ブーブリル、クロード=ミッシェル・シェーンベルクによる『ミス・サイゴン』の音楽の成り立ちを、比較しながら解説していきました。

 どちらも、フランスに根付くシャンソンや、それ以前のフランスクラシック音楽にルーツを持ち、ひとつの音楽のモティーフ(材料)を中心として、変奏の輪によって3時間の大作が作曲されていったこと。両者の共通点、後者においてクリエイターが進化したと思われる点、について、生演奏を挟みながらお話ししました。

 

【演奏曲】「我が心の夢」『ミス・サイゴン』(フランス語)

「星よ」『レ・ミゼラブル』(英語)

「もしも」『ミス・サイゴン』(英語)

「サン・アンド・ムーン リプライズ」『ミス・サイゴン』(英語)